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「それなり」の原状回復工事

2022. 4. 26

2010年に、同時に漆喰と木の室となった、3室のうち2室が、たまたまこの春退去となった。オーナー様から、直接連絡があり、それなりに痛んでいるから、回復工事お願いしますの依頼を受ける。出向くと、今回は文字通り「それなり」だった。前回、「美しき退去」で、銘を連ねた部屋も、結局入居者次第ということになる。

 

カトレア天神ビル201号室:2010年施工 今回は、天井壁床の補修のほか、襖紙を張り替えた。和の菊紋用とブラックローズフローリングの組み合わせ

カトレア天神ビル402号室:オリジナル照明器具(hoosenLIGHT)が、ぼんやりと壁の隅で灯っている。

カトレア天神ビル201号室のオリジナル照明:漆喰の型で作った。なんのカタチか?秘密(ヒント:有名な北欧の作家のデザインのものから)

 

いやしかし、それぞれ10年近くの入居だから、それなり、は当然だ。一つ一つの繕いは小さいが多岐に渡り、工事全体としては、それなりの金額にもなった。私たちが設計して施工し、そして原状回復に携わる、当に絵に描いた「ワンストップ」受注である。逆に捉えるなら囲い込み、の類?。漆喰の壁、天井と、無垢床材の補修については、部分補修を旨としているので、どこまで戻すべきか、実は微妙なレタッチなのである。全部やってしまう方が無難だが、毎回にそこまでする必要がない、というのが、自然素材の本然だろう。

 

あたかも歴史的絵画の修復をするかのような微妙なさじ加減を踏まえた施工を、だれができるだろう?ちょっと大げさに言えばそういうことである。もし、これらを一人で行うことができれば、結局は、それは原状回復費用の削減、やっかいものというイメージの自然素材が、長期的には経済的な合理性を持っていることになる。

 

ということで、原状回復完了の写真を4枚。かつて手作りしたオリジナル照明の明かりを見て、ああ、こういうところまで楽しくやらせてもらっていた、そして、こういうのが好きな入居者さん達と知らぬ間につながっていたのかな、などと想像しながら、我が若かりし頃の創作欲になんとなく励まされたりもした。

費用がいくら、とは書かないが、今回のような「それなり」の漆喰壁や天井の補修でも、ビニールクロス全張り替えの値段と比較すれば、4~5分の1程度で済んでいると思う。床の傷も、削って、磨いて、塗って、の3工程を経るが、部分補修なので、費用はわずか。ベニヤのフローリングが薄皮一枚が剥がれた先を四苦八苦しながらレタッチするより、無垢材を削って新しい面を用いる補修方法の方が、仕上がりも費用も合理的である。

 

カトレア天神ビル402号室 改修から12年後、すでに費用は回収? これから息の長い素材の力が試される。

こうやって、しかるべきやり方でやっていけば、維持もしやすい、ということが原状回復工事を預かることによって、実感できるようにもなってきた。

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