2014年に、壁〜天井のみの改修をさせていただいた、カトレア天神ビル403号室の原状回復工事。6年前の2019年/4月に、一度、原状回復工事に入らせていただいていて、その時は、漆喰の補修はほとんど小さな擦り傷のタッチアップで済んでいた。(漆喰部分の原状回復費用=¥17500+税)
<黄色い色の違いは、完全に硬化したら、消えて、薄レモン色に同化する>
今回は、少し大きく削られた1面と、壁の真ん中に大きめのシミが2面あって、時間の経過もあるので、この3面の塗り足しを提案して、実行した。(¥117500/漆喰工事一式)賃貸マンションと漆喰仕上げの相性は、かなり良いと言える段階にきている。2014年以来、2度の現状回復工事で、壁〜天井(計110㎡)の更新が、1.75+11.75万円=13.5万円で済んでいる、という経済性が一つ。この費用は、当然ながら、入居者の住まい方に因っているところがあるが、みなさん、本当に、注意しながら(塗り壁を愛していただきながら?)住んでいただいて、この値段である。(2001年以来原状回復工事で全塗り替えしたことはない)11年間で2度の原状回復工事で、もしビニールクロスの張り替えだったら、この値段で済むだろうか?。もう一つは、「塗り足し」。漆喰壁は、荒壁下地でもないかぎり、塗り替えの際、「塗り足し」になる。既存の漆喰を剥がさなくて、その上から、また3ミリ前後塗るから、漆喰の塗り厚は追加される。厚みが増した分だけ、原理的には、より長いスパンの調湿性能を獲得することができる。また、意匠的にも厚みのある壁になっていく。
この二つの利点から、原状回復工事を繰り返すことになる賃貸の一室と、漆喰仕上げは、相性がいい、ということになる。
この部屋については、一室全部を藁入り漆喰としていたので、今回も、同じ仕様を繰り返した。マンネリ化せずに常に新しいトライアルによって、部屋を探す側にとっても、楽しいはずだろう。少し手間はかかるが、賃貸住宅は、意匠的に更新されていく店舗と似ていて、毎度毎度工夫を加えるようにしている。塗り立ては、藁のアクが漆喰を黄土色〜レモン色にする。その後、硬化とともに、薄いレモン色に落ち着く。廊下〜キッチン、リビング、トイレ、脱衣所まで、全部、薄レモン色の漆喰、に囲まれた賃貸の一室である。注文住宅であっても、そういう部屋は滅多にないけど、この賃貸の一室には、これがある。
その他、既存の照明器具に、障子紙で作った梅鉢型のシェードを追加。(内見された方、この小さな工夫に気づいてください!)そして、3枚の襖は、11年の使用で流石に手が触るところが、禿げてきていたので、その部分のみを貼り足した。全部を新調するのが気持ちいいかもしれないが、これも漆喰同様、この部分のみを貼り足すことによって、より強度を得られないか、というのと、経済性、意匠性を含めて、部分補修を採用した。¥12000円+税 これらは、多能工的な原状回復工事のやりかたによって、実現した、スピードと経済性と思っている。